保存・修復事業

保存・修復事業

国指定重要文化財の保存・修復事業についてご紹介します。

対馬宗家文書の修理事業

長崎県では、対馬歴史研究センターが収蔵する対馬宗家文書を、平成4年(1992)度から行っています。
はじめ1名であった修復作業員(史料調査補助員)は、平成9年(1997)度には3名体制となり、特に「裏打ち」と呼ばれる作業に従事してきました。
しかし、平成20年(2008)度に修理の方針が大きく変わり、ほこり落とし(クリーニング)や、折れ・シワ延ばし(フラットニング)といった「維持管理行為」に取り組むようになりました。

対象とするのは対馬宗家文書の中でも毎日記と通称される資料です。
厚いもので1000丁を超え、1冊の作業を終えるのに約半年もの時間を要します。そのため、3名で作業に取り掛かっても、年間6~7冊程度しか終えることができません。
対馬宗家文書内に毎日記はおよそ3500冊あることから、莫大な時間がかかることが容易に想像されます。
維持管理行為は大変根気の要る作業なのです。

一方で毎日記の中には、維持管理行為でもまったく手に負えないものが沢山あります。
虫損・汚損・破損が激しいもの、湿気による固着で開くことができないものなど、伝来の仕方によって状態は様々です。
しかし、このような資料もきちんと後世に伝えていかなければなりません。
そのため長崎県では、平成27年(2015)度から国の補助金を受けながら、資料の「本格修理」を行っています。
国宝修理装潢師連盟に加盟する熟練した技師たちが、一つひとつ丁寧に手作業で行うことから、多くの費用と時間を要しますが、出来上がりは限りなく元の状態に近く、これまで開くことのできなかったページから新しい歴史の事実が発見される可能性があります。

このように長崎県は、維持管理行為と本格修理をうまく使い分けながら対馬宗家文書の保存に努めています。
修理が完了したものは、対馬博物館の展示室にて順次公開(活用)していく予定です。
対馬の先人たちが大切に守り継いできた対馬宗家文書。
――今度は私たちが後世に伝えていくために皆様のご理解とご協力が必要なのです。

保存修復室(@長崎県対馬歴史研究センター)
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